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2016.01.13コラム 制作実績 名刺デザイン

名刺に温もりを。活版印刷で名刺作りました。

先日自分の名刺をリニューアルしたのですが、以前から気になっていた活版印刷で印刷してみました。普段なかなか紙のデザインをする機会が少ないので、今後の備忘録を兼ねてその感想などを書いておこうと思います。

なぜ活版印刷にしたのか?

そもそも活版印刷って何?という話ですが、とても大雑把にいうと、凹凸のある版の凸部分にインクを乗せて転写するハンコのような原理の印刷方法です。印刷ってみんなそうじゃないの?と思われる方もいるかもしれませんが、現在主流の印刷方法は、オフセット印刷などに代表される平版印刷です。

印刷の種類について簡単にご説明しますと、大きく分けて、凸版、平版、凹版、孔版の4種類に分かれています。

凸版印刷(活版印刷)←今回のはコレ

ハンコのような版で、凸部にインキをのせて紙に転写させる方法です。活版印刷はその一種です。歴史も古く、かつては新聞、雑誌、書籍などの印刷の主流でしたが、現在はポストカードや名刺の印刷に姿をとどめる程度になってしまいました。

平版印刷(オフセット印刷)

凹凸のない平らな版に水と油の反発を利用して転写したい部分にインクを残し、複数の転写工程を経て紙に転写させる方法です。オフセット印刷に代表される現在もっともポピュラーな印刷方式で、精度が高く、大量印刷に向いています。書籍からチラシまで幅広く用いられています。

凹版印刷

版の凹みにインキをいれて紙に転写させる方法です。食品パッケージなどに用いられるグラビア印刷が代表的です。ちなみにいわゆる「グラビア」は、従来そういったページの印刷といえばグラビア印刷だったから、という説があります。

孔版印刷

版にあけた穴にインキを通して紙に転写させる方法です。Tシャツプリントなどに用いられるシルクスクリーン印刷が代表的です。懐かしのプリントゴッコなんかもこれですね。

このほか、番外編としてオンデマンド印刷も一般的です。

オンデマンド印刷

大型のプリンターのようなもので、版が要らないのが他の印刷方法と大きく違う点です。「ネットで格安印刷!」みたいなのはこれが多いです。安くて早いのが魅力ですが、他の印刷と比べると画質は劣ります。

そんな、減少傾向にある活版印刷をなぜ選んだかといえば、そのアナログな風合いを一度試してみたかったからです。

というのも、普段目にして素敵だなと思う印刷物が、紙の質感が生き生きして、うっすら文字が凹んでいるものが多かったんですね。しばらく特殊加工の一種だと思い込んでいたんですが、それが活版印刷によるものだと知ったのは割と最近のことでした。また、わずかな凹みは版をプレスする際に生まれるものでした。

それから機会があればやってみたいなとは思うものの、普段Webデザインが主なのでなかなかそうもいきません。ですが、ちょうど自分の名刺の替え時だったことを思い出し、渡りに船とばかりに試してみたのでした。

仕上がった名刺

紙はあまり詳しくなかったので、印刷会社の方に相談して提案してもらいました。「活版の凹凸を活かす優しい風合いのものを」というオーダーにご提案いただいた、クッション紙を採用しました。この紙はソフトで厚みがあり、コースターなどにも使われています。

また、紙の厚さを活かして、小口染め(紙の側面の着色)も施してみました。

小口と裏面のブルーは一見同じ色に見えますが、小口と同色だと淡すぎる印象なので、裏面の方を少し濃いめにしています。

良かった点

やはり独特の風合いは期待通りでした。個人的に活版最大の魅力は凹みにあると思っているのですが、これによってつるりとした印刷物よりも趣きや上質感があります。

もともとクッション紙自体ソフトですが、その繊細な陰影によって紙の柔らかさが強調されているように感じます。

活版らしさ愉しむという意味では、もうちょっと圧を強くして凹みを深くしても良かったかなと思いました。ただ今回の場合、反対面に響かないようこの程度に抑えているようなので、深くしたい場合は、表面だけのデザインにするか、反対面に凹みが響いても影響のないデザインにする必要があります。

あと、平版印刷と比べてシャープさに欠けると思っていましたが、意外に細い線までキレイに出ていました。あまり緻密なものには向きませんが、ある程度なら細かい表現にも対応できそうです。

残念だった点

少し残念な点としては、裏面のパターンのせいか、紙が若干たわんでしまいました。これは紙質にもよるかもしれません。

それと、平版印刷やオンデマンド印刷に比べると印刷費用は高いです。
今回の場合、

  • 紙:特Aクッション紙
  • 色:表面 標準色1色 + 裏面 特色2色
  • オプション加工:小口染め
  • 印刷枚数:100枚

という条件で3万5千円ほどかかりました。

ただ条件によって変わりますので、ポイントを押さえればもっと安くなると思います。

今回はねあがったのは、
❶ 3色使用(うち2色が特色)
❷ 両面刷り
❸ 小口染め加工
によるものなので、標準色1色 + 片面 + オプションなしのデザインにすればだいぶ抑えられそうです。

あとは印刷会社によっても変わるかもしれません。

まとめ

ある程度覚悟はしていたものの、印刷費用が思っていたよりかかったので、もう少しデザインと予算との落としどころを考えた方が良いなと思いました。

コストがかかるポイントは色数と版数なので、予算に余裕がない場合は、標準色1色や片面だけのデザインにした方が良さそうです。あとはどの紙を選ぶかにもよるので、もっと安い紙にすればさらに抑えられますが、限度があるので、安さ優先ならオンデマンド印刷の方が良いと思います。

とはいえ、この他の印刷にはない独特の風合いには満足しています。シンプルな名刺でも、温もりと存在感がプラスされることで、少し底上げされる感じがあります。温かみのある名刺が欲しい人や、名刺をちょっとグレードアップさせたい人にはオススメです。

というわけで、まとめると以下のような場合が活版印刷には向いていると思います。

優先する条件
求める雰囲気 温かみ、クラシカル、格調などを表現したい場合

  • ただ、モダンな要素と組み合わせても新鮮さを演出できるので、意外と先進的なデザインにも対応できそうです。
色数 1〜2色
デザイン シンプル

ひと味違う名刺にしたい方は、次回、活版印刷を選択肢に加えてみてはいかがでしょうか?

また、名刺デザインは弊事務所でも承っております。詳しくは 名刺デザインページ をご覧ください。